2012年8月23日木曜日

ふじの温泉 東尾垂の湯


 この温泉には何度かうさと一緒に訪れている。これからもきっと何度も訪れるだろうと思う。車で1時間半はかかるだろうか。国道20号を西へ、八王子を過ぎ、高尾を越え、相模湖を経て、さらに道志の方へ進んでゆく。森の中を進み、山に囲まれた湖や川を木々の間にかすめながら。
 東京の生活や仕事に疲れると、ここに来たくなる。東京の、と言っても、東京の西側の「郊外」と言われてもいるようなところなのだけれど。でも、その生活に苦しさを感じる。山が見えない。空気が滞っている。音がうるさい。森の匂いがしない。家と家、建物と建物の間が近い、ビルが高い、空が狭い、人が多く、関係が窮屈で打算的。その目には警戒心と猜疑心が見える。
 少なくともぼくとうさには、そこから離れる時間が必要なのだ。この温泉には、そのお湯のよさを十分に生かす、自然と食べ物と空気がある。施設は「近代的」だが、ふじの温泉病院が併設されていて、湯治場としての意味がまだ配慮されているところ。東京のいわゆるスーパー銭湯とはあきらかに違う。
 東京には自然がない。当たり前のことかもしれないけれど、そのことを切実にその身に感じている人はどれだけいるだろう。しばらく前に髪を切った。その美容室でシャンプーをしてくれた若者がぼくに、荻窪や吉祥寺は自然がいっぱいあっていいですねと話しかけた。そして、井の頭公園には自然の森がありますねと、同意を求めてきた。ぼくは耳を疑った。なんと答えていいのかわからなかった。遠い隔たりを感じた。そしてその後で、その若者は青森県に故郷を持っていることを知ったのだ。

(neko)

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